ドン・ガバチョの俳句・和歌教室 


 ©井上ひさし/山元護久・ひとみ座・NEP21・キャラクターデザイン片岡昌

ブフブハ。「ひょうたん島」の中に歴史に残る名句がいくつも詠まれていたことを皆さんはご存知でありましょうか。

わたくしはこれから『ドン・ガバチョ回顧録』を開いて、それらを紹介いたしたいと思うのであります。もちろん作者は風流をこよなく愛し文人として名高い、かく申すわたくしドン・ガバチョその人であります。 

 

      行方不明のトラどんを探しに行って海岸で詠めるうた(829回)
        
海原や おお海原や 海原や

     いかがですかな。なかなかスケールの大きな俳句ではないですか。では続けてどうぞ。 
                           
       このサクラ おもちであれば サクラモチ
       
       このサクラ ぼうやであれば サクランボ

       水面に 写る美男や ドンガバチョ

       この世をば 我が世とぞ思う ドン・ガバチョ

       フシギな夜 ドンガバチョ一人でハンコ押すなり ポンペタ
    
     
(1175〜1179回 黒牛おじさんの話で)
       我と来て 遊べや親の ないベコッコ

       すずめの子 そこのけそこのけ ガバチョが通る

       名月や 犬が西向きゃ 尾はじべた

     
(389回)
       エヘン、ながむれば あっちでいびき こち いびき 
               民のいびきはニギワイにける グーグー

とべとべとんび空高く
               ピーヒョロ ピーヒョロ ピーヒョロロ

カンカン王国シリーズで、ドン・キホーテに言い寄られて困るサンデー先生に代わってガバチョが作ったうた。(もちろん、サンデー先生には採用されませんでした。)
       血管の 熱き血潮は 高鳴れど 
               姫よ姫よと 君に呼ばれて

カンカン王国シリーズで、トラヒゲに恨み骨髄のガバチョが詠んだうた。
       食いものの 恨みおそろし 柿ひとつ 
               食えぬ恨みを いつかはらさでおくべきか



 
伊藤悟君の「ひょっこりひょうたん島熱中ノート」には、第4句とよく似ている「地獄をば わが世とぞ思う ドンガバチョ」という句が入っておりました。「この世をば……」と「地獄をば……」はそれぞれ別個のものなのか、これはひょうたん島文学史上の重要な問題でありますので、どなたか調べて下さるようお願いいたしますゾ。

 さて、復刻版「アラビアンナイトの巻」に出て来るアル・カジル王国の冒険では、次から次に歌が頭にわいてきましたぞ。自分で言うのもなんですが、まことにわたくしは天才ではないかと思うのであります。
   
   
砂に呑まれたひょうたん島を見て(第2回)
     さようなら その一言も言えなくて涙流しぬ わがドングリまなこは
   辞世の句     
 
  人はみな死んで花実は咲かねども 花実が咲くのはドン・ガバチョだけ       
   
    オバケに化けて
    幽霊は楽しからずや白ムクで たびたび来ては只飯ぞ食う
     
    あなうれしガバチョは死んでも人気者 かたじけなさに涙こぼるる

   
辞世の句ふたたび(第15回)
     冷たさや 池にとび込む ガバチョかな

  
またまた辞世の句(第15回)
   
人はいつかは死にまする ガバチョはただいま死にまする アラヨイヨイ 

  こう詠んで池に飛び込んだところ、なんと池がお風呂に変わっておりまして、たいへん結構、かえって寿命が伸びたのでありますゾ。

わたくしの作品はもちろんこれだけじゃございませんが、残念ながら今どこにあるのかわからないものもたくさんありまして、このままなくなってしまったら人類の貴重な文化遺産が失われることになるのであります。大いにゆゆしきことですから、どうか皆さん、ご記憶のものがありましたらなんなりとこのホームページまでお寄せ下さるよう、お願いいたしますですゾ。 

画/片岡 昌


トップ アイコン  トップページへもどる