「ひょうたん島」最大の謎、「人間レコードの巻」

 



 イラスト:西岡美貴

 「人間レコードの巻」というのは、「ひょうたん島」のオリジナル版放送の終了後34年ぶりの新作で、2003年2月1日に放映されました。
博士が「ヨクナール」という薬を発明したことで、世界中の政治家の頭が良くなって、世界からもめごとがなくなりました。しかし、ひょうたん島は魔女たちに占領され、みんな首にレコードを巻かれた「人間レコード」にされてしまったのです。「人間レコード」にされた人間は、昼も夜も歌い通し、眠るのも許されずに歌い続けなければなりません。博士たちは反撃に出ますが…、という話で未完です。井上ひさし先生が2010年に亡くなられたために、その後の話の展開は誰にもわからなくなってしまいました。
この作品が放映されたのはイラク戦争が勃発する直前で、「ヨクナール」の発明には、戦争回避と平和への祈るような思いがあふれていると思います。しかし、ご存じのように戦争は止められず、それ以後の世界の状況は、まさに魔女の支配下にあるひょうたん島と重なっていると言わざるをえません。
博士のこの言葉は何を示しているのでしょうか。
 「ひょうたん島のみんなは、この世でもっとも悲惨な責め苦に遭っていると云っていい。…ひょうたん島民は、なによりも歌が好きだ。歌をうたうことが、そのままぼくらの仕合せでもある。ところが魔女たちは、そのぼくらの二つとない仕合せをこの世でもっとも辛い苦痛に変えてしまったんだ」
物語の最後で博士は人間レコードにされ、ダンプは石になってしまいます。ライオンも24時間限定とはいえネコにされてしまいます。魔女は博士に「ヨクナールの解毒剤の処方を教えてくれたら、その場で人間レコードを解いてあげるよ」と言うのですが…。

 この作品はNHKエンタープライズのDVDに入っています。また「ひょうたんタイムズ」第46号で台本を読むことが出来ます。
 この話の続きを「ひょうたん島」を愛する皆で考えてみませんか。

「人間レコードの巻」の続きを考えるためのヒント

 全く光が射してこないかのような状況ですが、ライオンは元に戻るでしょう。この島にはほかにアホウドリがおり、外部との連絡役になってくれます。博士もこのまま退場はしないはずです。不思議なのはプリンが出ていることです。339回で、ワニ王子と結婚してひょうたん島から去ったはずのプリンがひょうたん島にいるのは、魔女たちが彼女の国を奪ったということなのかもしれません。
 魔女たちはマジョリタン魔法帝国を再建しようとしています。この企みはなんとしても粉砕しなければなりません。

山口真さんから寄せられた「人間レコードの巻」、続きのアイディア

どうすれば首にレコードを巻かれた博士たち、石にされたダンプは元に戻れるだろうか?

まずみんなでぶつかりあってレコードを壊そうとする。
しかし壊れないので、次に岩に体をぶつける。そうすると目から火が出て、博士のレコードに燃え移って博士が最初に自由になる。
博士は1人洞窟に隠れる。ポケットの中にはヨクナールが入っている。

ダンディーがパトラ、ペラ、ルナ3魔女をピストルで撃つ。
魔女のハートはトランプになっている。しかしトランプはどこかに隠されているので、いくら撃っても倒せない。

ライオンの魔法が解けて元に戻る。ほえ続けてアホウ鳥のホウ助とホウ左衛門が飛んで来る。2人は自分の国に帰っていたワニ王子に知らせる。博士も合流する。ワニ王子も来て、みんなで魔女と戦う。石を投げたり、棒で叩こうとするが魔女には歯が立たない。

ホウ助とホウ左衛門がほら穴でハートを見つけ島民に渡し、みんなはハートをねじり、魔女は痛がる。
魔女がひるんだすきに博士がヨクナールを飲ませ、ようやく魔女は心も体も普通のおばさんになり、みんなのレコードはとれる。ダンプも元に戻る。最後に平和が来る。

(「ひょうたんタイムズ」第47号から)

 

 

しっかり考えられていますが、これとは別の展開もありうると思います。「人間レコードの巻」の続きを考えることは、未完に終わった「カラマーゾフの兄弟」の続編を考えるに匹敵する難しさがあると思いますが、どなたかぜひチャレンジしてみて下さい。
なお「ひょうたん島」に出て来るアホウドリですが、「海賊の巻」などに登場するホウスケ33世は「ランニングホーマー一族シリーズ」では死んだと報告されており、最終回に登場するのはその息子です。そのあたりも含めて、原典にきちんと依拠することが肝心です。

(井上 豊)

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